きみのとなり

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「噂だと、エリも狙ってるとか、告白したとか聞いたけど」  ああ、だからか。  普段、同じクラスの人間だって認識しているかすら怪しい、まるで興味の対象ではない私に、わざわざあんなことを尋ねてきた意味を理解した。  エリちゃんには何一つ勝てるところがなくて、気の利いた振る舞いやスカートから伸びるすらりとした足を見る度、いいなあ、あんな風になれたらなって思っていた。  でも、こうして大津くんと二人で同じ時間を共有できていることが、もしかしたらエリちゃんにとってすごく羨ましいことかもしれないのだと思ったら、少しだけ自分の価値が上がった気がした。 「ごめん、ちょっと寝ていい?」  大津くんは大きなあくびをして、目をこすっている。 「あ、うん」  そういえば、席決めをしたあの日も、大津くんはあくびをしていたっけ。  これもよっちゃん情報だけど、大津くんは進学校の桜幹(おうかん)高校を受験するらしい。きっと、毎日夜遅くまで勉強しているんだろう。 「あまり寝てないの?」  大津くんは「うん」と答えた。 「ゲーム、遅くまで毎日やってんだよ」  多分、嘘だと思ったけど、私はそっかあ、と相槌を打った。
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