第1話「プロローグ」

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第1話「プロローグ」

 かくて世の終わり来たりぬ。  かつて詩人T.H.エリオットは(うた)った。地軸くずれるとどろきもなく、ただひそやかに……かくて世の終わり来たりぬ、と。  だが、古い映画にそれを記憶して思い出しながらも、少年の物語は終わらない。  そして、彼の……摺木統矢(スルギトウヤ)の目覚めを促したのは、耳をつんざく轟音だった。 「――ッ!? ここは? 信号途絶、機体反応ナシ……イジェクト!」  鉄の棺桶(かんおけ)にも似た、コクピットの密閉空間を内側から炸薬(さくやく)で吹き飛ばす。統矢はベイルアウトと同時に、オイル臭の漂う外界へと排出された。這い出て砂の上を両手で藻掻(もが)いて足掻(あが)き、ようやく自分の機体が海辺の渚に擱座(かくざ)していることに気付いた。  自分が生きていると実感できたのは、その次だ。  その間もずっと、臓腑(ぞうふ)に響く地鳴りのような振動音は続いていた。  波打ち際に立ち上がり、さざなみに洗われる自分の愛機を振り返る。  そこには、胸元から下を喪失した統矢機のコクピットブロックを庇うように、鋼鉄の巨人が膝を突いていた。  ――パンツァー・モータロイド、通称PMR(パメラ)     
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