バツをキミに

4/8
前へ
/8ページ
次へ
「花丸っ!」 思わず声を上げた円に、明地は優しく微笑む。 見たことのない柔らかな笑顔に、ぽうっとした円をニヤリを笑い、明地はペンを動かした。 ザッザッザッと勢いよく並べられた直線が、花丸の下に×を描く。 「え? バツが3つ? 3箇所修正ですか!?」 一度は引っ込んだ涙が、目尻から溢れそうになる。 赤ペンを投げ出して、頬杖をついた明地が、小首を傾げる。 「知らないのか。知らなかったら?」 「まず調べる!」 明地に口酸っぱく言われていたことだ。 「とりあえず、検索します!」 スマホを取り出そうとした円に、明地は何かを思い出したようにして止めた。 「あ、しなくていい。やっぱり、いい。やめとけ」 「え?」 「これはな……」 レクチャーを受けようと、神妙に姿勢を正した円に、明地が近づく。 呆気に取られている間に、その距離は唇でゼロになった。 「……こういうこと」 「………………ふぇぇぇぇ……!?」 湧き上がっていた涙も全部受け止めてしまうほど、瞳を大きく開いた円に、明地は満足そうに微笑んだ。 「無知なお前に罰だな」 「え……嫌がらせ?」 「なんでそうなるんだよ。×って、キスって意味だよ、知っとけよ」 「知りませんよ、そんなの……」     
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加