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「花丸っ!」
思わず声を上げた円に、明地は優しく微笑む。
見たことのない柔らかな笑顔に、ぽうっとした円をニヤリを笑い、明地はペンを動かした。
ザッザッザッと勢いよく並べられた直線が、花丸の下に×を描く。
「え? バツが3つ? 3箇所修正ですか!?」
一度は引っ込んだ涙が、目尻から溢れそうになる。
赤ペンを投げ出して、頬杖をついた明地が、小首を傾げる。
「知らないのか。知らなかったら?」
「まず調べる!」
明地に口酸っぱく言われていたことだ。
「とりあえず、検索します!」
スマホを取り出そうとした円に、明地は何かを思い出したようにして止めた。
「あ、しなくていい。やっぱり、いい。やめとけ」
「え?」
「これはな……」
レクチャーを受けようと、神妙に姿勢を正した円に、明地が近づく。
呆気に取られている間に、その距離は唇でゼロになった。
「……こういうこと」
「………………ふぇぇぇぇ……!?」
湧き上がっていた涙も全部受け止めてしまうほど、瞳を大きく開いた円に、明地は満足そうに微笑んだ。
「無知なお前に罰だな」
「え……嫌がらせ?」
「なんでそうなるんだよ。×って、キスって意味だよ、知っとけよ」
「知りませんよ、そんなの……」
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