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そう言って自分の額を指す。
「佐助、お前は鬼ではのうて人じゃ。ほれ、ここに角などなかろ?」
今度は佐助の額をかさついた指で撫でる。
佐助は自分でもそこを何度も触って、角が無い事を確かめた。
「んん?じゃあ婆様は鬼なのに人のおらの世話をしながら一緒に暮らしとるのか?おかしくないね?」
「くくく、お前はまだ小さく痩せておるからの、大きく育ったらいただこうかの」
とんでもないことを言うその時の婆様の目も、佐助の白い髪を撫でる手つきもとても優しかったので、佐助は自分がからかわれたのだと思い、安心した。
「でも……本当におらは人か?なんでおらは皆と違ってこんなに醜い?本当は物の怪なんではないか?」
「顔が細いもんもおれば丸いもんもおる。背の高いもんもおれば低いもんもおろうが。お前はただ色が変わっとるだけじゃ。皮の下には皆と同じ赤い血が流れとろうが」
「それは、他の獣でも赤い血が流れとるじゃろ?」
「おまんが誰より人らしい心を持っとることは、鬼であるわしにはようわかる」
え?やっぱり婆様は鬼なのか?
混乱する佐助に、婆様は薄く笑ってそこから先は口を閉ざした。
そんな話をしたことも忘れかけていたころ。
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