1133人が本棚に入れています
本棚に追加
里の人はみな土色の肌に黒い髪、黒い目をしているのに、自分は肌も髪も、春の訪れを告げる辛夷の花のように真っ白なのだ。そして、これが一番人を気味悪がらせると後に理解するのだが、眼の色が婆様の言葉を借りると稲穂のような黄金色で、瞳の真ん中の皆が一番黒いところが、赤い。
佐助を見た里の人はみな一様に驚いて目を見開き悲鳴をあげ、途端に恐ろしいもの汚らわしいものを見たように顔を醜く引き攣らせる。
「化け物」
「物の怪」
「鬼の子」
そんな言葉で罵られ、近づくなと砂利や石を投げつけられる。
佐助が何度目かに連れられて里へ下りたとき。
婆様が山で採った薬草を他の品に交換するあいだ、「気味が悪いから外に出せ」と言われてひとり傍のあぜ道でしゃがんで待っていると、里の少年達に囲まれた。
皆それぞれに手に木の枝や竹棒を持ち、じりじりと取り囲む輪を縮めてくる。そして、ひときわ体の大きな少年の「物の怪、退治じゃ!」という号令を皮切りに、一斉に殴り掛かってきた。
身を護る術も知らず、恐怖から助けを呼ぶ声すらあげられず、されるがままになっていた佐助は、婆様や大人たちが外の騒ぎに気付いて出てきた時には、傷だらけで方々から血を流しぐったりと横たわっていた。
だが、婆様がその小さな体を抱き上げたときも、周りの大人たちはただ目を背け、誰一人子供たちのしたことを咎めるものはいなかった。
最初のコメントを投稿しよう!