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何度かそうやってひとりで留守番をするうち、佐助はあることに気が付いた。
こうして留守番しているときに限って、イタチやタヌキよりも大きい獣が小屋の周りを歩き回っている気配がするのだ。
日に何度かやって来ては小屋の周りを周回すると足音は消える。そうして暫くすると、狼の遠吠えが聞こえ、それに呼応するようにあちこちから遠吠えが何度か聞こえ、また静かになる。
いつもはこの小屋の周りに狼たちが近づいてくることは無い。だが、留守番した次の日にはやはり狼らしき足跡が小屋の周りに沢山ついている。
そのことを婆様に話してみたが、婆様はふんと鼻を鳴らしただけだった。
ふふ、狼たちは本当はおらと友達になりたいのかな。そうなら、おらは大歓迎なんだけれども。
佐助は狼が好きだった。見た目も聡そうで凛々しくかっこいい。そして何より群れで行動することに憧れのようなものをいだいていた。
狼の群れの中心は番だ。狼の番はとても仲睦まじい。そして自分の子供たちと群れを作る。新しい子供が生まれれば、群れ全体で世話をする。生れたばかりのちびすけ達の可愛さったらないし、ちびすけと遊んでやる兄や姉もとても楽しそうに佐助の目には映る。
狼たちはちゃんと互いに言葉が通じている様に見える。甘える声、喧嘩している吠え方ぐらいは佐助も聞き分けられるが、遠吠えで誰かが吠えればちゃんとそれに誰かが応える。群れで狩りをするときもちゃんと意思疎通が図られ、無駄な動きが無い。
「いいなあ、おらにはあんまり喋るのが好きでない婆様しかおらんのよ」
もちろん婆様のことは好きだし、山に捨てられていたのであろう気味の悪い自分を拾って育ててくれていることには感謝もしている。
ただ、時々無性に孤独を感じるのだ。
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