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鬼婆
佐助と婆様の住む粗末な小屋は山の奥深くに建っている。
普段は里の人が分け入る事も無く、ふもとからここまで上がって来るための道も無いようなところだ。
年に何度か山では手に入らないものを里へ仕入れに行くときにだけ、獣道を辿っていく。
幼い頃、佐助は婆様になんでこんなに山深くに暮らしているのかと、尋ねたことがある。勿論佐助が居る今は、佐助のために里から離れているのかも知れないが、その前から婆様は一人でここで暮らしていたという。たった一人で寂しくはなかったのだろうか。
その問いに婆様は奇妙な笑みを浮かべて答えた。
「わしは鬼じゃからの。人と鬼は一緒には暮らせん」
「鬼?鬼ってなんじゃ?婆様と里の人はどこが違う?」
「くくっ、鬼はな、人に災いをもたらし苦しめ、時にはばりばりとその頭から喰らうのじゃ」
目を見開き絶句する佐助だったが、そこではたと気付く。
「おらも鬼か?だから、こんなに里の人と見かけが違うんか?そんで、みんな怖がって退治しようとするんか?……んん?じゃが、婆様は皆と同じじゃなあ……」
「くくくっ、わしは上手く化けておるのじゃ。本当はここに二本、角が生えておるんじゃが、人からは見えんように化けておる」
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