怖い猫

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車に乗ると 知らない顔に囲まれているのに 奴は澄まし顔で助手席に座り 不安気な様子が微塵も無い。 後に判る事だが奴は大の車好きだった。 大きな青い瞳を持っているのに 奴はいつも目を細め 殺し屋の様に睨みをきかせていた。 ゴルゴ(仮名)と呼ばれるのに相応しい。 見た目も行動も。 奴は人と少しでも目が合うと 容赦なく襲いかかった。 湖の様に澄んだ瞳は、 雨上がりのアスファルトに 一滴の油を落としたみたいに ピンク色にギラギラと光った。 狙われた家族は助けを求め叫ぶ。 斜めにゆっくりと 奴は獲物に歩み寄り全力で喰らい付く。 牙を肉にめり込ませ 骨をゴリゴリ言わせながら齧る。 しかも、被害者の目を見ながら モグモグしてる! 一緒に暮らしているのに 誰も奴に触れる事ができなかった。 ある日家に帰ると 母が微妙な顔でソファーに座っていた。 母は一瞬妊娠している様に見えた……が 腹がモゴモゴ動いてセーターの首元から 仔猫が顔を出した。 シャムの血が入った アメショ似の仔猫だった。 聞けば、飼主が居ないと言う子を 招き入れたそうだ。 手の平サイズの彼女は リスの様に家中駆け回った。 殺し屋に狙われるのではと皆心配した。 カーテンによじ登りソファーを駆け上がる。 新参者の癖に殺し屋の餌を平気で貪り、 背後のゴルゴに気づかない。 チビが振り向く。ゴルゴと目が合う。     
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