禁断の召喚

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就職の為、上京して早3年。 友人も恋人もできない僕は、寂しさの余り、禁断の儀式を今、実行しようとしている・・・。 路地裏の、怪しい店で購入した、妖精召喚キット。 ~寂しがりやのあなたに、キュートな手乗り妖精が、癒しをあげちゃう!~ 歌い文句にひかれて3万円(税込み)も、だしてしまった。 説明書には、新月の零時に、キットに入っている魔方陣が描かれた紙を広げて、その上に空のグラスを逆さに置く。 そして、次の呪文を唱えよとあった。 「ポーポポポポポ、ポーポポポ。  クーククククク、クーククク。 ゲルポーゲルポ。」 恥も外聞もなく唱えた。 果たして、10秒後・・・・・ まばゆい紫色の光が部屋中に満ちて、グラスがパーン!と割れた。 魔方陣の紙の上で、何かが蠢いている。 僕はずり落ちた眼鏡をあげながら、その物体へと近づいた。 「な・・・・・・っ!?」 そこには、15センチくらいの、一糸纏わぬ姿の中年のおっさんが佇んでいた。 ツルツルの頭からは、黄色いチューリップが一本生えている。 「初めまして。ご主人様。わたくし、モグ・ド・プチ・オッサンハッサンと申しますゲポ!」 「・・・。ごめんなさい。還って下さい。」 「それはできない相談ゲポ。一度召喚されると、戻れないゲポ~。」 「うがああああーっ!こ、これは、悪い夢だああああ~!!」   数ヵ月後・・・・ ちっさいおっさんは、裸エプロンという、ある意味バイオレンスなスタイルで、家事をしたり、 僕と一緒にRPGをしたりして、けっこう楽しい日々を過ごしている。 寂しさはなくなり、こんなのが召喚されて、生き地獄かと思ったが、今僕は、幸せだと思う。
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