1話 残酷な世界

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人は生まれた時からたくさんの鎖に縛られ、何十年も生きることになる。しかも生きてるだけで差別や優劣が自分の知らないところで作られる。そう思い始めたのは中学2年の夏だった。 僕はあまり頭の出来はいい方ではなく、運動も人並み以下だった。学校のテストの順位は下から数える方が早く、周りの皆に馬鹿にされ、小学校のころからやっていたスポーツも中学からやり始めた同級生全員に抜かれる始末。正直、生きてることすら嫌になってくる。 どんなに努力をしても、どんなに勉強をしても自分と同級生その他の優劣は変わることなくただただ僕は生きてることが分からなくなってきた。 夏休みが明け、2学期が始まった。夏休み明けテストも散々な結果でとうとう教師にまで馬鹿にされる始末だった。どうせ授業に出ていても同級生に馬鹿にされることは目に見えているので休み時間中に誰にも見つからないように立ち入り禁止のテープが張られた階段を上り、屋上へ向かった。 僕の学校はなぜか屋上の鍵がかかっておらず、噂では3年ほど前にこの学校の生徒が鍵を壊して出入りをしていたらしい。それが教師に見つかってその生徒は停学からの転校。その後は立ち入り禁止のテープを張って放置状態らしい。僕は正直言って転校するほどのことでもないと思うけどなぁとこの話を聞いた時は思った。 屋上に出るとまだ夏の暑さが続いており、太陽が屋上の床をチリチリと照らすが、高い場所にいるせいか心地よい風が僕の短い髪を小さく揺らす。上を見上げると嫌っていうほど青い空が地平線の彼方まで続いている。
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