告白

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「えっと、写真ぐらいならいいですよ。あのスマホとかで撮りますか?」 「え? ほんとに。ありがと。一眼レフカメラで撮りたいから次回朝倉さんが歯科医院へ来た時にいいかな?」 「歯科医院で撮るんですか? なんだか…」 瞬時に歯科医院で、変わったポーズをさせられてしまう自分を想像してしまった。 ーーー歯科医院で撮るの? なんだかマニアックな感じがして抵抗あるけどなあ。嶋先生って、こんな顔しちゃって、まさか変な趣味のある人なんじゃ? 疑心暗鬼になっている私に気がついたのか信号で停まった時に、嶋先生は私の方へ顔を向けた。 「そんなに抵抗あるかなあ。たしかに、女の人は結構抵抗あるみたいなんだけど……」 ーーー抵抗がある? やっぱり、へんな写真を撮る趣味なんじゃ? 完璧にひいていた。疑いの眼差しで嶋先生をじっとりと見た。 「そんな顔する? 口の中の写真撮るのがそんなに嫌かなあ?」 「口の中の写真? へ? どういう事ですか?」 「口の中全体の写真を撮りたいんだ。朝倉さんみたいな綺麗な歯列で健康なピンク色の歯肉をしている口腔内が好きでね。 そういう理想に近い口腔内に出会うとうずうずして写真に収めたくなるんだ」 「ちょっと、待って。えぇ? えっと、嶋先生は私の口の中の写真を撮りたいの?」 「そうだよ。ただ、口の全体写真をとる場合、かなり唇を引っ張るから嫌がられるんだよな。だから、あらかじめ、本人の承諾を得ないとまずいだろ?もちろん、患者全員の口の中は撮影しないんだ。理想的な口腔内と凄く治療が長期に渡りそうな口腔内写真だけを撮ってる」 熱く語り出す嶋先生をあっけにとられてみていた。
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