告白

7/10
3213人が本棚に入れています
本棚に追加
/256ページ
「俺は完璧な口腔内写真だったら、いらないんだ。そんなのは、歯科用の冊子で充分」 運転している嶋先生の横顔は楽しそうだった。 「一箇所だけ惜しいんだよなってくらいが理想的。その点、朝倉さんの口腔内は綺麗だよな。それなのに、奥歯の2本だけが虫歯だって所がいいよね。完璧なのは魅力が無いから」 饒舌に話す嶋先生。 「ほら、アイドルでもさ、なんでこんな子が売れてるんだろってのがいるだろ。あれみたいなもんだよ。完璧な美しさより、少しどうかな?って思う所がある方が隙がある。だから、好きなんだ。朝倉さんの口腔内」 完璧では無いと言われるのも、どうかと首をかしげる所だ。でも、それと同時に浮かんできた疑問があった。 「えっと……もしかして、先生の好きなのって私の口の中って事でしょうか?」 「うん。そうだけど……」 顔から火が出そうだった。突然、火がついて勢いよく燃え広がり、施しようがなくなった山火事みたいだ。 何故、勘違いしたんだろう。 嶋先生は、私を好きだと言った。だが、それで誤解してしまった。整理すると、私は嶋先生が私自身を好きなのかと思い込んでしまった。 なのに、先生が好きなのは私の口の中だと言う。笑い話にもならない。マニアック過ぎる話でついていけそうにない。
/256ページ

最初のコメントを投稿しよう!