ときめきは止まりません

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ーーー勘弁してよ。歯医者なんか行く暇ないって。 本当は、時間なら作ろうとすればいくらでもある。だが、嫌な事は、出来れば避けたい。先延ばししてしまいたい。 洗面所に走り鏡の前で大きく口を開けてみる。 ーーーあー、やっぱり! 鏡に向かって左側の下の奥歯。穴が開いて黒く変色していた。 コップに水を入れ口をゆすごうとして、そのまま水を吐き出した。 「しみる!」 歯に水がしみてしまっていた。もう一度口を開き、指を口の中に入れて頬の肉を押しやりながら銀歯が取れた所を鏡に映す。 「だめだ。こりゃ……」 何度見ても、黒く変色している歯が見えるばかりだった。 首を横に振り、取れた銀歯を水に流されないように気をつけながら洗った。 ーーーなってしまったものは、仕方ない。そうよ。あたふたしたって、取れたものは取れたんだから。なんとかコレが、すぐ付けられればヨシとしよう。 リビングに戻り洗った銀歯をティッシュで拭いてから戸棚を開けて考えこんだ。
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