3200人が本棚に入れています
本棚に追加
★★★
「お口をゆすいで下さいね」
ピンク色エプロンの女性に言われて、倒れていた椅子が起こされた。
頬を押さえながら、起き上がる。
ーーー痛かったら、左手って言ったじゃん。手なんか上げても全然やめなかったじゃん! この嘘つき!
背中を向けてカルテに文字を書いている嶋医師を睨みつけてみた。
「見てないで、ゆすいで下さい。もう終わりですから」
「えっ!」
ーーーなんで睨んでたのがわかったの? 後ろ向いてるじゃん。
周りを見回しながら、恐る恐る紙コップを手にして口をゆすいだ。
ーーーあー、そっか。きっと水の音がしなかったからね。だからかぁ。
最初のコメントを投稿しよう!