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「仮に詰めてあるだけですから、粘着性の食べ物は控えて下さいね。それと」
私の方をクルッと向いた嶋医師は、マスクを外してスッとコロコロチェアで近づいて来た。
嶋医師の方を向いていた私の目の前に急に現れた嶋医師の顔。
「わっ!」驚いて声を上げた。
お互いの顔から顔の距離は、拳ひとつ分しか離れていない。
「あの! なに?」
後ろにこれ以上は下がれない所まで椅子のヘッド部分に後頭部を押し付けた。
「……におわないな」
「え?」
魅力的な顔は、その存在だけで人を落とせる。なのに……。
既にマスクを外している嶋医師は、その顔がきっと、どうすれば更によく見えるか自分でも充分に熟知している。
ゆっくりと微笑んで見せた表情は、そんじょそこいらではお目にかかれないほどの極上なイケメンが見せる勝負顔の極みだった。
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