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「俺、そんなに歯医者臭いんだ?」
くんくんと、袖のにおいも嗅ぐ嶋先生。
「そんな気にするほどでも……ははっ」
「気にするだろ。臭いって言われたんだから」
「いや、あの臭いって表現が、あれですけど」
必死にフォローしようと、頭を働かせてみた。
「いいよ。もう。朝倉さんは、歯医者臭いのが嫌なんだろ?」
嶋先生が、がっくりと肩を落として溜息交じりに聞いてきた。
「えっと、嫌だというか、苦手で」
「まじで……俺、歯医者辞めたくなってきた」
嶋先生の発した言葉に驚いて、口をアワアワさせていた。
「いやぁ、あの辞めなくても。歯医者になるには、たくさん勉強もしたんでしょうし。医療系の学校はお金もかかったと思いますし……簡単に辞めるなんて」
「簡単じゃない。これが二度目だからだ」
「え? 二度目ですか?」
訳がわからず嶋先生を見つめた。
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