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「いや、そんなことより、俺の事だ。一体、どうなっちまったんだぁ?」
体は動かせないのに、周囲の状況は見て取れる。何か奇妙な感覚だが、それが孝也に冷静な思考を取り戻させていた。
「あの人は俺が勇者だとか言っていたが、まさかな……」
思い出し、呟いていると、自分の周りにゾロゾロと人が集まってきているのがわかった。少なくとも現代日本では見慣れない服装ばかりがそこにはあった。
その中でもひときわ目立つのは、いかにも王様というような格好をした老人、彼が引き連れる重武装の兵士たち。
「な、なんだ? 何が始まるんだ?」
などと怯えて見せても、体は動かない。
そんな孝也の心情など無視するかのように集まった者たちはことを進めていた。
巨大な孝也の前に立ち、背を向けた王は声高らかに宣言した。
「我こそと思う勇士よ! 前へでよ!」
王の言葉に無数の若者たちが駆け寄ってくる。みな、性別も姿もバラバラだった。軽装の鎧に身を包んだ若い剣士もいれば、長い杖を携えた魔術師然としたものもいる。そこに集まったものたちは、みな、戦士であることが、孝也にもわかった。
そして、彼らは順々に孝也の前に立つと、何事かを念じたり、叫んだりしている。
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