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聞き取れる範囲内では「動け」だの「答えろ」だの、時には呪文のようなものを唱えるものもいた。
孝也としても、それに答えてやりたいのは山々なのだが、いかんせん声が出ないし、体も動かない。むしろ、意図せず高見の見物をしている状態なのが、逆に恥ずかしかった。
「なにをしてるんだ……こいつら……」
その光景をぼんやりと眺めること一時間。
遂に最後の一人にも応じることができなかった孝也は何とも言えない気持ちだった。色々とむずがゆい気分だった。なにせ、自分に語り掛けてくる連中の大体がかっこよさげな台詞やら自分の過去語りやら呪文詠唱みたいなことを続けていたのだから。
それに対して、孝也は耳をふさぐこともできず、ずっとそれを眺めるしかなかった。そしてそれが終わっても、反応を示すことができなかった。
逆にどうしてやったらいいのか教えて欲しいぐらいだった。
「王よ、どうやらこの中に選ばれし御使いはいなかったようですね」
ふと、王のそばにフードをかぶった魔導士がいることに気が付いた。
「うむ、大陸中の腕自慢を集めたのだがな……我らに残された時間は少ないというのに……」
「左様です。一刻も早く、御使いを見つけ出し、リーンを起動させなければ、世界は滅びましょうぞ」
「わかっておる」
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