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そのような会話が聞こえてくるわけだが、孝也としては話の内容よりも、魔導士の方が気になった。
声から察するに女だということがわかる。
そして、どうにも、この声に聞き覚えがあった。いや、むしろつい最近、聞いたことのある声のような気がしたのだ。
「ん? 待てよ、あの顔……」
その瞬間、魔導士の女はフードをまくり上げ、こちらを見上げた。
真っ白なフードから出てきたのは、真っ白な長い髪を持った女だった。
「あ、あぁぁぁ!」
その女は、間違いなく、あの白い空間の中でこちらに語り掛けてきた女だった。
見間違えるはずもない、他人の空似とも思えない。
何より、その女はこちらを見上げた瞬間、ウィンクをしてきたのだ。
「お前、お前ぇぇぇ! どういうことだ、おい、返事をしやがれ!」
届いているのか、聞こえているのか、さっぱりわからないが、孝也は叫ばずにはいられなかった。
すると、女は人差し指を唇に当てて「静かに」というジェスチャーをしてくる。
そして、王に伴われてそのまま去っていった。
「おい、こら、待て、説明しろ! つーか、元に戻せこのやろー!」
それが、大井孝也の、異世界初日の出来事であった。
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