180人が本棚に入れています
本棚に追加
「くそ、全く意味が分からん。あの魔法使いっぽい姿をした奴……間違いなくあいつなら全てがわかるはずなんだ。この体が動けば、とっちめてやるんだがな……」
やはり、何度試しても体が動かない。自分の意識はあるし、周囲を見渡すことができるのにも関わらず、体が動かない。奇妙な感覚だった。
「あぁ、クソ! 一体何がどーなんてんだよぉぉぉ!」
「きゃっ!」
どうせ聞こえてないんだろうが、文句は言わずにはいられない。そう思った孝也は大声で叫んだ。
すると、予想外の返事が来たものだから、きょとんとしながら、真下を見下ろした。
そこには、数人の少女たちがいた。全員、花を手にしていて、同じような花をあしらった刺繍をつけた衣装を着ていた。
その集団の一人が、びっくりしたような顔でこちらを見上げているのだ。大きく、くりくりとした瞳はぱちくりと瞬きし、ペタンと尻餅をついているが、決してスカートが翻らないように両手で抑えていた。亜麻色の長い髪はさらさらと風にゆれていた。
「うん?」
今、この女の子は自分の声に反応していなかったか?
そう思った孝也はもう一度、声をかけてみようと思った。なるべく、怖がらせないように、びっくりさせないように、フレンドリーな言葉を捻りだそうとした。
「あー……」
最初のコメントを投稿しよう!