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で、結局言葉に詰まるのだ。幼い少女へ話かけるなど、早々体験するようなものではないので、困ったというわけである。しかも、自分は巨大なロボットなわけだから、なおさら怖がらせるような真似はできない。
さて、一体どうしたものかと悩んでいたその時である。
地の底から響き渡るような、おどろおどろしい雄叫びがあがった。
「なんだ?」
人の出せる声ではない。無意識のうちにそれを理解した孝也は、唯一感覚として動かせる視界を真正面へと向けた。
その時、彼の視界は、おぞましいものを捉えた。無数の民家が広がる先、緑の生い茂る大地の果て、かなり距離はあったが、今の孝也はそこから迫りくる黒い影をしっかりと確認できていた。
「化け物か……!?」
それ以外の感想は出てきそうになかった。まず、大きさが異常だ。自分と同じぐらいに巨大であり、人のような形をしているが、獣のように四つ足で地面を這いながら真っすぐにこちらを目指している化け物。長い手足に、異様に発達した筋肉、ギラギラと黄色く光る両目に対して、その生物には口や鼻にあたる器官はない。
それでも、どこからか狂気に染まった雄叫びが上がった。
孝也がモンスターを認識したのと同じくして、街全体にカンカンと警鐘が鳴り響き、住民たちの悲鳴が一瞬にして全体を覆った。
「あいつ、こっちに来るのか!」
モンスターは進行方向を変えることなく、真っすぐに突き進んでくる。
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