第二話 選ばれし勇者は君だ

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 そんな恐怖に駆られた孝也であったが、不意に聞こえてきた声に、思わず耳を傾けた。 「勇者様、私たちを助けてください」 「……!」  その声は幼い少女のものだった。  孝也は思わず、真下をみた。先ほど、自分の声に驚いたであろう少女が花を握りしめ、祈るようにして、その言葉を繰り返していた。他の少女たちは泣き叫び、恐怖に怯えた姿でいる中、その少女だけは自分に向かって祈りを捧げていた。 「……勇者」  勇者。確か、真っ白な空間にいた時、自分は勇者として選ばれたと言われたことを思い出す。世界を救う勇者として、呼び出されたのだと。 「お願いします、勇者様……!」  少女は今なお、祈り続けていた。  いや、よく見れば、少女は震えていた。それは当然だと孝也は感じた。怖くないわけがない。この女の子だって怖いのだ。だからこそ、彼女は世界を救う勇者に祈りを捧げている。  そして、自分は、その勇者だったらしいのだ。あの空間でのやり取りが嘘でないなら、自分はあの巨大なモンスターと戦う必要があるはずなのだ。  しかし、動けない。いくら、身じろぎしても、この機械の体は動いてはくれない。 「き、きたぞ!」  住民の絶望に染まった悲鳴で、孝也は我に返った。     
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