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一体いつの間にそこまで迫っていたのか、巨大モンスターはとうとう広場の目と鼻の先まで接近していた。
「不味い……!」
モンスターは狂った叫び声を上げながら、広場へと侵入しようとする。
その瞬間、パァっと光が生じた。何事かと思えば、一人の魔導士が杖を掲げ、広場を覆うバリアのようなものを展開していた。
「あいつは……」
バリアを展開していたのは、真っ白なフードをかぶった白髪の女魔導士だった。
モンスターはそれに阻まれ、先へ進むことができないでいたが、同時に醜く歪んだ爪でバリアをひっかき、打ち破ろうとする。
その光景と、響き渡る怪音は不愉快であり、恐ろしいものだった。
故に、住民は、我さきにと背後の城へとなだれ込んでいく。
「うあ……」
その流れの中で、祈りを捧げていた少女は蹴飛ばされ、その場に転ぶ。手にしていた花は次々と踏み潰されていった。
混乱の波となった人々の中で、少女は立ちあがることもできずに、その場にうずくまるしかなかった。
一方で、モンスターは巨腕を振るい、遂にはバリアを破り裂く。白髪の女魔導士はその衝撃で大きく吹き飛ばされていくのが見えた。
そして、邪魔をするものがいなくなり、これ幸いにと、モンスターは唸り声をあげ、再び腕を振り上げる。
広場には、まだ、少女が残っていた。
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