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「で、でも……私なんかがあんな化け物倒せるわけがないよぉ……」
「君をこんなことに巻き込んでしまって申し訳ないと思っている。でも、ここにいる人たちを、なにより君を助ける為に、力を貸してほしい。俺一人じゃ、何もできないから」
孝也は自嘲気味に言った。とんでもない矛盾を言っている。
自分は言葉巧みにこの幼い少女を利用しようとしている。それは、恥ずかしいことだ。男として、それは到底許せるものじゃない。
しかし、今は、それをしなければいけないのだ。
目の前に迫る巨大モンスター。全長四十メートルと言ったところか。城壁をぶち壊し、民家を踏み潰し、ただ狂ったような雄叫びを上げながら、突き進む暴威の塊を倒すには、幼い少女に頼らなければいけないのだから。
「俺は、酷いことを言っている。君を守ると言いながら、君を戦わせようとしている。だから、恥を忍んで、君にお願いする。俺と、俺と一緒に戦ってくれ!」
少女の瞳にはまだ恐怖の色が残っていた。体は震え、唇もうまく動かせない。振動が伝わる度にびくりと跳ね上がる。
それでも、少女は、前を向いた。
「……うん、わかった……わかったよ!」
少女はコクンと、頷き、浮かべていた涙を払った。
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