プロローグ あいつこそ最強無敵の勇者

2/7
前へ
/252ページ
次へ
「で、でも……私なんかがあんな化け物倒せるわけがないよぉ……」 「君をこんなことに巻き込んでしまって申し訳ないと思っている。でも、ここにいる人たちを、なにより君を助ける為に、力を貸してほしい。俺一人じゃ、何もできないから」  孝也は自嘲気味に言った。とんでもない矛盾を言っている。  自分は言葉巧みにこの幼い少女を利用しようとしている。それは、恥ずかしいことだ。男として、それは到底許せるものじゃない。  しかし、今は、それをしなければいけないのだ。  目の前に迫る巨大モンスター。全長四十メートルと言ったところか。城壁をぶち壊し、民家を踏み潰し、ただ狂ったような雄叫びを上げながら、突き進む暴威の塊を倒すには、幼い少女に頼らなければいけないのだから。 「俺は、酷いことを言っている。君を守ると言いながら、君を戦わせようとしている。だから、恥を忍んで、君にお願いする。俺と、俺と一緒に戦ってくれ!」  少女の瞳にはまだ恐怖の色が残っていた。体は震え、唇もうまく動かせない。振動が伝わる度にびくりと跳ね上がる。  それでも、少女は、前を向いた。 「……うん、わかった……わかったよ!」  少女はコクンと、頷き、浮かべていた涙を払った。     
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!

180人が本棚に入れています
本棚に追加