180人が本棚に入れています
本棚に追加
第三話 少女の祈り、勇者の決意
少女クレアは、ぱちくりと瞬きをして、孝也を、勇者リーンを見上げた。
数か月前。突如として街に出現した巨神。王様に仕える魔導士は、それを世界を救う勇者であると言っていた。
そして勇者は選ばれし御使いだけと心を通わし、力を授けてくれるのだと。
つまり、御使いこそが真の勇者なのだと語った。
しかし誰も勇者と心を通わせることができなかった。王様は世界中からたくさんの人を集めて試していたけれど、誰一人として勇者を呼び覚ますことはできなかった。
そんな勇者が、自分の目の前で頭が飛び出して、見たこともない鳥になって、今度は小さな勇者になった。
それでも、自分よりははるかに大きい。
「勇者リーン」
勇者は優しい声で、そう名乗った。
その声は、クレアにだけ聞こえたあの声と同じだった。あの時、友達と勇者へのお供えものとして花束を置きに来た時に聞いた声と、同じものだった。
小さくなった勇者は膝を着き、まるで物語に出てくる騎士様のように、大きな腕を差し出していた。
「わ、私は……私はクレア、です」
そして、クレアも名乗りを返した。
「クレア。可愛い名前だ。安心してくれ、君たちは、俺が守る」
最初のコメントを投稿しよう!