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それでも全ての恐怖は打ち払えない。でも、少女は勇気をもらった。そう、自分は一人じゃない。だって、勇者が付いているから。最強で、無敵で、カッコイイ勇者様がいる。
少女は決意を固めた。そして、少女は、レバーを握った。
そして、叫ぶ。
勇者の名を。
「いっけぇぇぇ! リーン・ブレイバー!」
「おぉぉぉ!」
孝也も少女の叫びに応える。
「リーンドライヴ出力上昇! ホーリーエネジー最大循環を確認、目標距離六〇〇メートル!」
孝也の、否、勇者『リーン・ブレイバー』の鋼の肉体が唸りをあげ、起動する。
全長五十五メートル、その巨体はあらゆる害意から世界を守るもの。その巨腕はあらゆる邪悪を撃ち砕くもの。その曇りなき眼は真実を見通し、蒼穹に輝く鋼の体こそ聖なる勇者の証。
それが今の孝也の肉体であった。
「来るぞ、クレア。恐れることはない。俺は、最強だ!」
「うん!」
こちらの起動を察したのか、モンスターは今まで以上に咆哮し、長い四肢を使って跳躍。一瞬にして数百メートルの距離を埋めながら、両腕を鞭のようにしならせ、孝也の頭部を狙う。
「効くかよ! クレア、唱えろ、リーン・フィールドだ!」
「リーン・フィールド!」
孝也と少女クレアの声が重なると同時にモンスターの両腕が迫る。
刹那、モンスターの腕は白く輝く障壁によって阻まれる。
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