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プロローグ あいつこそ最強無敵の勇者
「こ、怖いよぉ……」
幼い少女は恐怖で震えていた。
まだ九つの少女にしてみれば、眼前に迫りくる巨大なモンスターは地獄そのものに見えるだろう。
「あんなモンスターに勝てるの?」
少女でなくとも迫る巨大モンスターの姿は恐怖以上のなにものでもない。
それは人のような形をしていたが、人ではない。隆起した筋肉組織は皮膚を突き破らんと脈打ち、触手のように蠢いていた。獣のように地を這うように進み、まるで尾のように長い手足をばたつかせながら、口もないのにどこからか咆哮を上げるその化け物を見て、恐怖しない者はいない。
「大丈夫だ。君ならできる。自信をもって」
孝也はそんな少女の恐怖を和らげるために、できる限り優しい声をかけた。
今、彼にできるのは、その程度のことだった。
孝也に恐怖がないといえば、それは嘘になる。
それ以上に孝也はこの少女を守りたいと思っていた。
彼は、はっきりと言ってしまえば無敵だ。目の前のモンスターなど一捻りで倒せる。それは、嘘ではないと自覚もしている。仮にこのまま無防備を決め込んでも、奴にこちらを傷つけるだけの力はない。
それでも、孝也一人では奴を倒すことはできないのだ。
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