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チャイムが鳴って、午前中の授業が終わった。お弁当を持って、教室を足早に抜け出す。
「神原さんって、よく分からないよね」
クラスの女子の内緒話は、当人には意外とはっきり聞こえてしまうものだ。やっぱりそう思われているんだ、と呆れを通り越して笑える。
親の都合でこの学校に転校してから、既に一ヶ月が経とうとしていた。初日こそ、動物園のパンダのようにグルリと囲まれて恒例の質問攻めに遭ったが、一週間もしないうちに誰も寄りつかなくなった。
冷めた目、素っ気ない態度、可愛くない……分かってるよ、自分のことくらい。
「……あ、」
いつもの自分の特等席、屋上の給水塔のてっぺんに、今日は先客がいた。ネクタイの色から、同学年の男子だと分かった。チャイムが鳴ってまだ五分も経っていない。サボりだったのだろうか。彼は金網にもたれかかって、目を閉じていた。
「……あ!」
その目が突然開くと、まっすぐに自分を見て飛び起きた。
「ごめん! ここ、いつも使ってるよね!?」
「え、あ、いや、別に、いい……けど」
「そなの? じゃあ一緒に座る? 俺、購買でパン買ってくるから!」
勝手に話を進めて、彼は給水塔から飛び降り、校舎の中に入っていった。台風みたい。何となく、動いちゃいけない気がして、給水塔の上に上る。風は穏やかで、雲がゆっくり流れている。やっぱりここが一番落ち着く。
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