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「ただいまお待たせ! あー腹減った!」
待ってないけど、断じて待ってないけど。軽々とハシゴを上ってきた彼は、その手に抱えた大量の惣菜パンを地面に広げた。
「あ、そうそう! はいお茶」
「へ?」
「お弁当は持ってたけど、飲み物なさそうだったから……あ、もしかしてジュースが良かった? それとも何も飲まない派?」
「あ、ううん、お茶でいい……ありがとう」
差し出されたペットボトルを受け取ると、満面の笑みが眼前に写る。台風の次は太陽みたい。ひとり北風と太陽か。いや、台風は北風じゃないな。
「神原さんって、いつもここで食べてるよね? 教室とか食堂で食べないの?」
「状況知らない? あの中じゃ無理」
「いや知ってるけどさ……そっか。まぁ無理して友達付き合いするよりは、無関心がマシってやつか」
豪快にビニールを破いて、彼は焼きそばパンを頬張った。あたしも冷めた白ご飯に箸を入れた。
「ポジティブだね」
「そ? ネガティブ思考なんて、損なだけっしょ?」
「損……」
「損!」
また太陽のような眩しい笑顔を見せられたが、むき出しの歯に青のりがついてたことは黙っていよう……誰かに突っ込まれればいい。
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