古民家レストラン

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モニターは無情とも言える情報を映し出していた。 取調室から帰宅した獅々友は、ずっとシュウ酸カルシウムについて、調べていた。しかし、どれだけ調べても、似たような情報しか得られない。正直、暗礁に乗り上げたと言ってよかった。 獅々友は、ため息をつく。化学を知らない刑事がどれだけ化学の情報を調べようと意味がないだろう。モニターの画面を睨み付け、それから獅々友は額に手を当てた。 今のところ、わかったことを列挙してみる。 ① シュウ酸カルシウムは0.1 mmほどの針状結晶である。 ② 不溶性で、二百度で分解する。 まず、シュウ酸カルシウムを調べてわかるのは、この二つだ。ただ、口内を二百度にするのは、さすがに不可能だと思う。絶望的な数字だと獅々友は思った。それ以外の情報では、こんなものがある。 ③ シュウ酸カルシウムは尿路結石の主成分である。 この情報は調べていて、よく見かける。その治療法がいくつかあるが、その中で敢えて使えそうなものを上げるとしたら、衝撃波を与えて小さく粉砕する方法だ。これなら、時園の歯肉に刺さり残ったシュウ酸カルシウムを粉砕して、少しはましになるかもしれない。しかし、粉砕されるだけで、そこに残り続けるのは変わりない。結局のところ、根本的な解決にはならないのだ。 そして、一番解決法らしいのは、 ④ お酢やレモン汁などを水で薄めた酸性の液体が、シュウ酸カルシウムを溶かす。 これなら、いけるかもしれない。最初、獅々友はそう思った。しかし、よくよく考えてみると、口内に露出しているシュウ酸カルシウムなら効果が期待できるが、歯肉の奥に入り込んでしまったものは、酸性の液体に触れられず残り続けるのではないか。そうでないなら、医者がずっとこのまま残り続けるとは判断しないのではないか。獅々友は、この解決法も違うような気がした。もっと確実な解決法はないだろうか。 獅々友は椅子にもたれかかる。 しかし、何度調べても同じだった。だから、薬袋に相談したというのに……。
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