古民家レストラン

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獅々友の部屋は、書斎を兼ねた寝室と表現できる。ベッドがあり、机があり、テレビがある。テレビは朝にニュースを見る以外、ほとんど使うことがなかった。空気はどこかよそよそしく、ひんやりしていた。蛍光灯の明かりが無機質だからかもしれない。いや、今日は西高東低の気圧配置で寒波がやってきますと、朝の天気予報で言っていたと思い出す。 寒さを紛らわそうと、マグカップに手をかける。せっかく淹れたコーヒーはすっかり冷めてしまっていた。しばらく考えて、マグカップを持ってキッチンに向かう。コーヒーを電子レンジで温め直し、湯気立つ黒い液体を口に含んだ。味がしなかった。ただただ、苦い。それから、数瞬で獅々友は砂糖を入れ忘れていたと思い至り、スティックシュガーを三本取り出す。それを入れて、スプーンでかき回した。 砂糖はコーヒーに溶けてなくなる。自室に戻った獅々友は甘くなったコーヒーをすすりながら、そんなことを考えた。シュウ酸カルシウムは不溶性だから溶けないで、残り続ける。 獅々友はモニターを起動させて、またシュウ酸カルシウムを検索し始める。また、同じ結果が並んだ。獅々友は目頭の間をつまんだ。疲労が溜まり過ぎていた。かすかに頭痛がする。今日はこれ以上、厳しいだろう。そう思った。 矢先、獅々友は、おや、と身を乗り出した。ある情報に目が留まったのだ。 しばらく、その情報が意味していることが、わからなかった。それから、今度は矛盾していると思った。 しかし、もしこの情報が正しいのなら……。 獅々友は、慌てて机の引き出しからメモ用紙を取り出し、ペンを手に取った。
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