古民家レストラン

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朝、薬袋はまた取調室で、獅々友と向かい合った。 獅々友は少しばかり憔悴した面持ちで、机に肘をつき、その腕で額を指圧するように支える。 「顔色が悪いみたいだけど」 薬袋は開口一番、獅々友の様子に触れた。 「ああ、ちょっと、これをまとめるのに時間がかかってしまいまして」 獅々友はメモ用紙を背広の裏ポケットから取り出し、薬袋に見せる。そこには、何やら計算式が書かれている。薬袋はそれを見て、それからゆっくりと獅々友の顔に視線を戻した。 「わかったのかしら?」 「どうでしょう」と獅々友は寝不足の目をメモ用紙に向ける。それは、奇妙な話ではあるが、どこかそのメモ用紙を慈しむようにも見えた。「それを薬袋さんに見てもらおうと思いまして」 「そう」と薬袋は淡泊に答える。薬袋はそれ以上、何も言わなかった。 沈黙が訪れる。 獅々友は、その沈黙を合図に、メモを机の中心に置いた。メモ用紙には、ある数字が書き込まれている。それを元にして計算式が走り、最後には一つの結論へと到達していた。そして、計算式の上には、ある言葉が何重にも丸で囲まれていた。それは、あたかもその言葉が全てを語っていると言わんばかりだった。 獅々友は、睡眠不足ではあったが、薬袋の言動に注意を払っていた。しかし、薬袋の所作からは、まだ獅々友が正解か不正解かはわからない。ただ、公正公平に薬袋が話を聞こうとしているように思えた。 獅々友は迷わず、突き進む。 「キーワードは『不溶性』です」 その言葉は、静かな取調室に力強く響く。 獅々友は薬袋の目を見据え、辿り着いた結論を述べ始めた。
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