接触

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「関係あるのよ」 薬袋は言う。何が? と獅々友は眉をひそめる。 「捩じったゴム紐と、かき混ぜた高分子の液体は関係があるの。原理的に考えると同じ説明になるのだけど」 「そう言われてもなぁ……」と獅々友は頭を軽く()く。 「化学的視点を少しでも持ってほしいのよ。言いたいことはわかるわよね?」 「ええ、まあ……」 獅々友はどうしようもない状況からどうにか逃れたかった。勉強は苦手なのだ。それにそもそも、今回ここに来た目的はこんなことを話すことじゃない。確かに、薬袋が濡れ衣を(こうむ)った大学院生毒殺未遂事件の真犯人は化学の専門的な知識を持っているだろう。だから、こうして薬袋が教えようとしてくれているのだが、犯人追及にやはり重点を置くべきだというのが獅々友の考えだった。 「これは宿題ね。また、別の日に聞くわ」 「そうしていただけると助かります」 獅々友はうなだれるような形で頭を下げる。そこで、ようやく料理が目に入る。よく煮込まれてビーフシチュー。獅々友は急に空腹を感じ、料理に手を付けた。 しばらく、沈黙が訪れる。薬袋は食事をしている人に話しかけない主義でも持っているのかもしれない。その代わり、薬袋はブラックコーヒーをゆっくりと時間をかけて(たしな)んでいた。
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