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「糖反射?」
「角砂糖四分の一程度で、胃の蠕動運動が数秒間止まる反応のことよ。糖が多くなると……そうね、缶ジュース一本くらいかしら……それで一時間以上も止まるの。1949年に東京大学の論文で報告されていて、昔から知られていることだけど」
「へぇ、じゃあ甘いものを食べるタイミングは食後がいいというわけですか」
「それもダメ。食後でようやく消化が始まるのに、そこに砂糖を入れたら消化が止まってしまうわ」
「そうだったんですか。ということは、飲みに行って、お酒と料理の後にデザート食べたら、戻しやすい状況になると考えたら、いいですか?」
「そうね、おそらく。でも、塩分を取ることで蠕動運動を再開することができるから、それで問題ないと思うわ」
「じゃあ、ミルクもそれに関係するんですか? 先ほど店員に質問していたので」
「あれは、別の話よ」薬袋はきっぱりそう答えて、ふと何かを考えるように顎に手を添える。「そうね、獅子友刑事はミルクがどう作られているか知っているかしら?」
「いや、どうって牛乳とかそういうのから作られているんじゃないですか?」
「それが、乳製品が全く使われていないものもあるのよ」
「へぇ、そうなんですか。じゃあ、それはいったい何なんですか?」
「水と油と界面活性剤」と薬袋は何でもないように答える。「それを混ぜて乳化して、白くしているだけ、マヨネーズみたいに。入れているものを考えると、それはもう石油製品ね。そんなもの飲みたくないでしょう?」
「確かに」と獅々友は自分の飲んだコーヒーに入れたミルクを考えた。「え? といいますか、マヨネーズも同じなんですか? 水と油とカイ……」
「界面活性剤。よく洗剤などで耳にすると思うのだけど。ただ、マヨネーズを作る原理と一緒だけど、ミルクと違って入れる材料が卵黄や酢と油を使っているだけマヨネーズは安心できるかしら。界面活性剤の役割として卵黄を使って、それで酢と油を混ぜているから」
「本当にいろいろ知っていますね」
「化学者ですもの。当然よ」
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