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時園は薬袋のことを獅々友から聞いていたらしく、彼女は薬袋を見るなり笑顔になり、立ち上がってお辞儀をした。
「本当に助かりました」
「いえ、そんな大したことは……」
「いえいえ、薬袋さんのご説明がなければ、私、本当にどうにかなっちゃってました。本当にありがとうございます」
「そう。それなら、よかったのかしら」
「もちろん!」
薬袋は時園の勢いに押されつつ、少しばかり笑みを浮かべる。おそらく、精いっぱいの笑顔なんだろうと獅々友は思った。
いったん落ち着いたところで、三人ともテーブルに着く。さきほどのバリスタ風の男性が注文を受けに来る。薬袋はカフェオレを頼み、獅々友はミルクコーヒーを頼む。時園はすでにブレンドコーヒーが手元に置かれていた。
「獅々友刑事はもしかして甘党なのかしら?」と薬袋はちょっとした疑問を口にする。
「そうですが、何かあるんですか?」
「いえ、ふと思ったので聞いただけよ」
「なら、自分も気になったのですが、薬袋さんはさっきの店では何も注文されなかったのはなぜですか?」
「単純にいらなかったからよ」と薬袋は何でもなさそうに答える。
「本当にですか?」と獅々友は薬袋をじっと見つめる。薬袋も獅々友からそう言われて、思わず見つめ返す。
「疑っているのかしら?」
「ちょっと深掘りをと思いまして」
獅々友は真剣な眼差しのまま答える。獅々友は鎌をかけていた。薬袋はしばらく獅々友と睨み合いを続けた後、諦めてため息をもらした。
「わかったわ。もう少し深掘りした回答をするわ。飲み物はいらないと結論付けた理由」
「そうしてくださると嬉しいです」
獅々友はニッコリと笑って頭を軽く下げる。薬袋はそれを見て、面倒そうな顔をして話始める。
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