バーンキャット

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「それで、不起訴処分になって研究室に来た薬袋さんと今後の研究についてなどお話しようと、ここにあなたを連れてきた次第です。残念ながら、今日は町田教授は出張でいらっしゃらないから、私が話すことにします」 「そうですか……。ですが、研究に関しては、これまで通り重合条件の検討を行っていこうと考えていますので、お話も何もないと思います」 「はは、研究の方針について、僕は何も口出しできないよ。それは町田教授と君が決めることだ」と皆谷助教はまた苦笑いする。「それよりは、困っていることがあれば相談に乗るよと申し出ているんだけど、特にないのかな?」 「お気遣い感謝します」と薬袋は恭しく頭を下げる。「でも、今のところ悩みはないので、問題ありません」 「そうか」と皆谷助教はどこか不満があるような歯切れ悪い感じで言う。「とりあえず、教授陣は薬袋さんの味方だから、それだけは理解しておいてほしい」 「わかりました」 それに対して、薬袋は特に不安に思ってはいなかった。自分は自分だ。正しいことをしているのだから、誰かに後ろ指を指される言われはない。そうする人がいたとしても、その人はただの想像力の足りない人物。薬袋はそんな心底どうでもいい人を相手しているほど暇ではないと、無視を決め込んでいた。
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