バーンキャット

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「議論はここまでにしていただいてもよろしいでしょうか? そろそろ実験したいのですが……」 「あ、ああ、そうだね。実験室に戻って大丈夫だよ」 動揺する助教に、薬袋は立ち上がって軽く頭を下げる。 「貴重なお話、ありがとうございました。それでは、失礼します」 皮肉にしか聞こえないお礼とともに、薬袋は部屋を出ようと、扉に手をかけた。そこで、薬袋は思う。 皆谷助教は、徹夜明けで変なテンションなんでしょう。 それでも化学者なら、興味を持つところはそこじゃないでしょう。 例えば、猫を燃やす方法とか。つまり、自然発火の化学で猫を燃やすにはとか。そういうところに興味を持つのが化学者なのでは? いや、それは私の考え過ぎなのかしら? ため息をこぼしそうになりながらも薬袋は扉を開け、その場を後にした。 今日一日は長そうね。 そんな予感を抱きながら。
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