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薬袋は反応の仕込みを進めつつ、今日の立ち振る舞いについて考える。
研究室は、教授陣三人とドクター一人、修士が六人、学部四年生が二人で構成されている。修士一年に薬袋、宇納、風村、そしてもう一人男子がいて四人。修士二年には、三田先輩と就職活動で研究室にやってこない女子がいる。
教授陣と宇納、風村は薬袋の不起訴処分を知っているが、他のみんなは知らない。最初、彼らは驚くだろうと薬袋は予想し、まあいいかと考えるのを止める。それよりかは、宇納と風村の出方が気になるところだった。
時刻は九時半。コアタイムは十時から十八時までとなっているので、そろそろ誰か来る頃だった。
仕込みを終えた薬袋は、久々の仕込みに少し疲労を覚えて席に着く。椅子にもたれ、なんとなく上にある本棚を眺める。薬袋がこの席になる前から置いてあるものもたくさんあり、それらが何なのか薬袋は内容もよく知らないまま放置してある。それでも、何度も見ていた光景だから、どこにどういう厚さのどういう色のものがあるのか薬袋は記憶していた。
「あれは何かしら?」
薬袋はその見慣れた本棚に、少し逡巡しながら手を伸ばす。見知らぬ黒いノートを手に取る。そこには、名前もタイトルもない。
何か嫌な予感がした。
それでも、薬袋はノートを開く。そこには、十数回ほどの実験データがまとめられていた。
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