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僕はエルと一緒に"賢者の石"を探す旅を始める事になったが、それを見つけ出すには僕たちはあまりにも無知だった。
賢者の石とは一体どのようなモノなのか。
色は?形は?重さや大きさは――――?
まだ何も分かっていない。少しでも情報を集める必要がある。
何から始めたものか。
小さな小屋の中の、小さなテーブルを挟んで僕とエルは色々な意見を提案し合った。
思いだした頃に、空になったコップにココアを注ぐ。
夜が更け込んで一層寒さが増してきた頃に、僕たちの意見がまとまった。
とりあえず、情報が欲しいのならば、情報がたくさん集まる場所へ行くべきだ。
僕たちは、賢者の石の情報を得るため"学術都市アルケイン"を目指すことにした。あらゆる文献や物語にその名前が登場する、世界有数の都市だ。
とある冒険記の記述によると、アルケインには世界中から有能な錬金術師や学者が集結しており、「世界の頭脳」と揶揄されているそうだ。また、他の文献の"学術都市で分からぬものはない。もし分からぬものがあれば、それはこの世の理(ことわり)ではない"という一文が印象的で、よく覚えている。
エルが家から持ち出してきた分厚い地図によれば、アルケインは僕たちが住んでいる大陸のちょうど中心の辺りに位置していた。
しかし、山奥の小屋――もちろん地図に載っている訳は無いので、我が拠点があると思われる場所――から歩いて行くには途方もない距離であることも分かり、アルケイン行きの馬車を利用する必要があった。
そのため、まずは馬車が通っている街を目指すことが、この旅の最初の目標であった。
行き先の目処がついた僕たちは、小屋で食料などの必要な準備を整えた後、一晩ぐっすり眠ってからいよいよ出発する。
そして小屋を出発して3日目の事だった。
街道を歩き続けていた僕とエルは、この旅の中で、初めて奇妙な経験をすることになる――
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