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 一気飲みダメゼッタイ!  畜生め、母さんにここまで育ててもらった命を危うく一時の陶酔のために捨てるところだったなんて、考えるだけでなんだか胸糞悪い。いや、胸糞悪いのは酒のせいかべらぼうめ。  しばらく吐き続けるともう胃液しか出なくなった。仕方ない、水でも飲もう、と席に戻ると雄二が 「あ、芳樹、今花子に付き合うなら俺と芳樹どっちが良いか聞いてたんだ」  と今度は花子の太ももにさりげなく手を添えながら顔を赤らめている。その股間が膨らんでいるのを見ながら僕は雄二に胃液の混じったつばを吐きかけたくなったが 「なに? それで? どっち?」  といってしまうのは、態度をぐにゃぐにゃに軟化させることによって弾圧を逃れてきた醜男の悲しい習性である。 「どっちかって言われたら雄二だけど、でもやっぱどっちもいや」  花子は笑った。 「なんでだよー。俺のどこがだめなんだよー  と雄二。 「だって雄二絶対浮気するじゃん」 「じゃあ、俺は? なんで? 俺は?」  と僕が花子に聞くと雄二が俺の肩に手を置いて 「それは、わかるやろ?」  とたんに花子が笑った。隣にいる文子まで笑いやがる。 「ちょっと、芳樹がかわいそうじゃん」 「そうだよ。俺かわいそー。泣いちゃう」  なんていいながら座ると、またぞろこみ上げてきた。僕は花子へのおさわりに余念がない雄二の目を盗み、店員を呼ぶと、水を頼んだ。  水を待っている間、誰一人として僕に話しかけてくる人はいない。ようやく水が来て一息つける、と思ったとき雄二が 「あれ? 先生、水ならこっちにありますよ」  といってグラスを僕に差出した。受け取ってみるがどう考えても水じゃない。色は水だがニオイをかいだ瞬間ぐえっと胸が悪くなるのはこれは焼酎だ。
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