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「さあ、先生、一気に」  と雄二が無理やり、いったん置いたグラスを持たせる。そして花子が始めやがった。 「芳君の、ちょっといいとこ見てみたい」  それを聞きつけた回りのその他大勢の一向宗が 「のんでのんでのんで」  と大合唱。僕はもうさすがに無理だ。足元もおぼつかないし、持っているグラスが二重に見えやがる。コールが終わっても僕がまだ動かないので雄二が 「あれ? 先生、どうぞ、遠慮なさらず」  みると酒のせいで興奮が抜けないのかまだおったてている。 「先生の、ちょっと良いとこ」  僕はグラスを持って立ち上がった。足元がふらついてバランスを崩し、何とか壁に手をついて転倒は免れたもののグラスから酒をこぼした。 「あ、芳樹、粗相だぞ」  と雄二がにやっと僕を見上げる。吐き気がして、僕はもう我慢ができないのを知った。 「そ・そ・お」  とコールを始めようとする雄二の顔に焼酎を全部引っ掛ける。一瞬何が起こったのかわかってない雄二に 「おいてめえ、黙ってりゃ調子乗ってんじゃねえぞ」  場の空気が凍りつくのがわかる。知ったことかその他大勢め。てめえら一向宗はさっさと信長に虐殺されろ、付き合ってられるか。 「さっきからきったねえ大砲おったてやがって雄二よお、隣のバルバスバウといい大艦巨砲主義か、時代遅れなんだよ! 何がいいとこ見てみたいだ。こちとら最初っからいいとこしか見せてねえってのにてめえらがセックスのことしか考えてねえから見てねえんじゃねえかサルが。その他大勢もイッキイッキって江戸時代か水のみ百姓か! お前ら一生そうやってあおられて空気読んで読みまくって最後はクワでもって鉄砲に立ち向かって犬死しやがれってんだバロ畜生! 俺は降りるぜ二度とくるか、こんな店畜生」  座敷を下りるとあわてたように店員が近寄ってくる。 「何いっちょまえに迷惑そうにしてんだ。どこのかわからんやっすい焼酎出しやがって。こいつ等がこんななったのも俺がこんななったのもお前らが出したくっせー飲みもんのせいだろうがこんなんで金取りやがってコンチクショー」  僕は店員の手からコートをふんだくると、会費の三千円を座敷で固まってる文子のバルバスバウめがけて投げつけ乱暴にドアを開けて外へ出た。  急に寒風が吹きつけ、僕は思わずコートの前をかきあわせた。  
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