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やってしまった、と思った。今あの席はどうなっているだろう。戻って確かめたい気もしたが、その勇気はない。
明日になったら記憶をなくしたふりをしようか。酔っ払っていたということで許してくれるだろうか。
「いやー、昨日は気づいたら溝にはまって寝ててさ。誰かしらねえ? どうやってあんなところはまったんだろ」
明日サークルでみんなに会ったらまずどういおうか、選択肢が八個ぐらい思い浮かぶ。その中で面白いと思えるのが四つ。まあ、みんな酔っ払ってたみたいだし、いけるかな。
空を見上げると覆いかぶさる雲が町の明かりを反射して妙に明るい。遠くから救急車の音がして、なんだか急に故郷が恋しくなった。
僕はひとつため息をつくと
「ああ、やめた。やめてやるよ」
空に向ってそういった。
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