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「月と火星に残ったヒトがどうしたか? 疫病を広げてはいけないから彼らが地球に来るわけにはいかない。となると、ここで僕らリカオンの出番となるのさ」
既に地球外に築かれた人口コロニーは大いに栄えており、完全に独立していた火星政府は疫病発見直後に地球からの渡航者をシャットアウトしていた。コロニー維持であれば単独でも可能だが、巨大デジタルアーカイブス《第三アレクサンドリア図書館》をはじめとした、膨大な情報網の遺失は、文明勃興より積み上げてきた人類史に計り知れない穴を開ける。早急に復旧と保全を行う必要があった。
「ヒトと同じように地球で生活をして、疫病にも強く、尚且つヒトとは似ても似つかないもの、そういう生き物を作って代わりに派遣しようと考えた。昔のヒトは神様が好きでねえ、ギリシャの伝説にある狼に変えられた王様のお話、君は知っているかな? それになぞらえて狼人間が誕生したんだよ。なぜ狼人間を選んだのかは諸説あるけれどね」
人類滅亡から三十年後、《アダム・ルネサンス計画》と銘打たれ、火星で生まれ育ったリカオンの第一団が地球に降り立った。しかし、四半世紀の空白は建造物にとってあまりにも長く、発電所を修復するためのエネルギーすら不足する状況だった。
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