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情報網の復旧は月面基地からの支援で二十六世紀までに完了したが、人類が再び根付くためにはさらに数百年の時間を要する。全ての『文明的』生活基盤を一から築き直すには器だけでは機能しないのだ。潤滑油を途切れなく供給しなければならない。
「リカオンはヒトがまた地球で暮らせるように、その用意をして待っているんだ。何世紀にも及ぶ、まさに壮大な計画ってわけさ。かいつまんで説明するとこんなところかなあ。ヒトとリカオンの間には何度も大きな揉め事もあってねえ、中にはお互いを快く思わない者もいる。それでも皆はよき隣人でありたいと願っているよ。君が困っていたらきっと誰かが助けになってくれるはずさ」
ここまで一気に喋り終えて、ジャンはコーヒーを飲み干した。フラスコの中の残りを注ぎ足してもう一口。
「ひとついいですか? 服とか家のデザインが僕が知っているものにそっくりなのはどうしてですか」
「僕らの役目はヒト探しのほかにもうひとつあるんだよ。終末のどさくさで失われてしまった人類文化を再興させるのさ。時代に関係なく僕らの暮らしにあったものから取り入れてきたから、君から見ればちぐはぐに映るかもしれないねえ」
知らない単語ばかりで半分以上は右から左へ抜けてしまったけれど、想像を絶する恐るべき事態に人間が敗北したというのは何となく理解した。
「わかりました。お話ありがとうございます」
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