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「予定を丸一日ずらして、壊した窓の弁償まで私に請求されたじゃないの! 延長の滞在費とガラス代、来月の給料から先払いさせるわよ!」
「そんなあ、新しいゲーム注文しちゃったのに――」
「知らないわよ、自業自得じゃない! これ以上余計な仕事増やしたらその脚へし折ってやるわよ」
ケーキの恨みがよっぽど深いのか、あまりの剣幕にこちらからなかなか声をかけづらい。でもひっくり返ったアレックスの腹を力いっぱい踏んづけようとするのはさすがに放っておけなかった。
「もうそのくらいにしませんか……? もうかなりきつく絞まってるし」
「この子は言って聞かないからこうやってお仕置きしないと大人しくしないの。まだ全然足りないわ」
「だったら僕がやります。アレックスが僕についててくれるなら、代わりに手綱を握ります。だから――」
「あなたに務まるの? そんな筋量の無いひ弱な身体でアレックスを御せるとでも?」
僕よりも頭二つぐらい背が高いから、険しい目つきで見下ろされると身がすくんだ。片手で軽々とアレックスを吊し上げながら、赤毛の彼女が拳で僕を小突く。結構力があって僕は後ろにのけぞりそうになったけど、ここは何とかこらえてこっちも見返す。
「が、頑張ればできるよ! ……たぶん」
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