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ハロウィンから明けた翌日。僕は狭いコンクリ打ちっぱなしの取調室に放り込まれていた。小さなテーブルと取調官用のデスク、それとパイプ椅子が二脚あるだけの殺風景な部屋。だいぶウィスキーを飲んだからよく覚えてないが、確かみんなと一緒に宴をしてからいざ帰ろうとした時に、運悪く妖精管理局の一斉摘発に捕まってしまった。そして、封魔術が施されたこの段ボールに押し込められて、気がついたらここに運び込まれたってわけ。
その原因は様々な状況であろうとも大体一つに集約される――人間にばれたこと。いかに人間が宗教あるいは科学に盲信的で《超自然》を否定しようとも、記録と証拠への執着心は地球上のあらゆる生物に置いて他の追随を許さない……要するに、監視カメラにばっちり映っていたのだ。世界屈指の監視社会たるロンドンには、最早死角というものが失われつつあるらしい。
今、僕を臭いものを見るように扱っているのは最早馴染みになった妖精管理官、カール・ディクソン。典型的なうだつの上がらない中年という感じで、機嫌が悪くなると眼鏡の右側の蔓をいじる癖がある。ちなみに髪の毛は白髪が増えてきているものの量は十分残っていた。きっとストレスのせいだろうが、断じて僕だけの責任じゃないことを付け加えておく。
妖精管理官とは、文字通り僕ら妖精が人間の迷惑にならないよう監視及び取締りをやる人間だ。そして彼等を取りまとめる妖精管理局は警察の管轄下にあり、政府内閣も含めて一握りしか知られていない極秘の機関なのだ。そんな訳でこの取調室は首都警察本部スコットランドヤードの地下に存在し、当然窓の一つも存在しない。だからいつも湿っぽくてかび臭い。
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