Act 1: Everybody wants to be a cat

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「そうだね。あ、もしかしてスリラーやるとか言ってたグループ? すっかり忘れてた」 「やめとけよ。腐敗臭が移るぞ」  次があったら参加してみようかな、とは口に出さないでおく。 ここには地上のスコットランドヤードから直接出入りすることはできず、ロンドン中に張り巡らされた秘密の通路を、無骨な鉄の箱に入って行き来する仕組みになっている。噂ではバッキンガム宮殿や国会議事堂に繋がっていて政府要人も訪れるとか。  とりあえずごはんということで、僕らは『メイフェア行き』のボタンを押してゴンドラの到着を待つ。その間にも四つの扉が乗客をひっきりなしに吸っては吐きだし、改めてこの都会の中に隠れ住む妖精たちの多さを知らされる。  結構時間がかかって手持ち無沙汰にしていると、アニメ版白雪姫に出てきそうな小人レプラコーンの一団が隣にやってきて、やれ空気がマズイだの食事がマズイだの仲間内でもめ出した。仕舞にはベルファストに戻るか戻らないかで口論に発展する。どうやら北アイルランドから移住してきたもののロンドンに慣れなかったようだ。耳元で大声を出され、ルークがだんだん機嫌悪くなってきた。不快感で毛が逆立っているのが背の上から分かる。 「もめるなら外でやれよ。それから帰りたきゃ帰ればいいだろが」     
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