Act 1: Everybody wants to be a cat

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 僕とルークが初めて出会ったのはとある夏の夜のことだった。その日、スコットランドからロンドンに初めてやってきた僕は、どこに泊まればいいのかも分からず道に迷ってしまった。なにしろ思いついたそのままに旅立ったものだから、手荷物も路銀もろくに用意していない。せめてお金だけでも下ろせないかと思ったら、口座を作った銀行はとっくに営業終了。ゆくあてもないまま歩き疲れ、くすねたジンのミニボトルを片手にロンドンブリッジの下でぶっ倒れていた。テムズ川の湿った砂原にしっぽをぺたんとくっつけて、対岸のロンドン塔に住むカラスと仲良くなる算段をうわごとで呟いていたらしい。  そこをねぐらにしていたルークが戻ってきたとき、最初僕を見て不法投棄のぬいぐるみだと勘違いしたそうだ。そしたら変な独り言が聞こえてきたもんだから、試しに踏んづけ温もりを確認してようやく生きた妖精だと気がついた。     
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