Act 1: Everybody wants to be a cat

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 ハロウィン――それは妖精たちの舞踏会。何も知らない人間達の陰でずっと息を潜めてきたフェアリーとモンスターたちが、この日ばかりは羽目をはずして大いに盛り上がる。いつも鬱気味な泣き女バンシーさえもハロウィンだけは笑い上戸になる(という噂)くらい、とにかくバカ騒ぎをして楽しもうというわけだ。  かく言う僕も、集合前の景気づけにちょっとした遊び相手を探しているところだ。もちろん警察に捕まりたくはないから、みたいなど派手なことはしないつもりだけどね。 どこかの野良犬の遠吠えを聞きながらしばらく歩いていると、前方から仮装行列の一団がやってくるのが見えた。僕は一旦路地の角に隠れて、彼らが近付いてくるのを待った。  およそ十人くらいだろうか、フランケンシュタインの怪物やエイリアンのかぶり物をそれぞれにして、服は黒い魔女ローブというちぐはぐなコスプレ。最初は粘りに粘ったトリック・オア・トリートかと思ったけれど、よくよく見ると何だか様子が違う。  コンセプトの不明瞭な仮装は百歩譲っていいとしよう。ところが……先頭のつの生え悪魔マスクをかぶったやつが、後ろの仲間達に得意げに言った。 「へへっ、あのババアずいぶん金持ってたぜ。ハロウィン様々だな」  戦利品であろう手に持っているものは、なんと明らかにひったくった女性用バッグじゃないか。無造作に財布の中身を抜き取ると、それだけ取って道端にぽいと投げ捨てた。他に金目のものが無いと分かるや否や、バッグ本体も適当に放ってしまう。     
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