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隣の不細工な狼男の方にはあんまり効いていないようだ。でも一人でも怖がらせたら、あとは不安がじわじわと広がってのを待つだけ。迷信というのはちょっとした恐れを何倍にも増幅させるからね。その証拠に、さっきまで乗り気だった吸血鬼があっさりと拒絶し始めた。
「やっぱこの辺でやめるべきだろ、調子に乗って捕まるのはごめんだ」
そういって彼は鬱陶しそうにマスクを脱ぎ捨てた。何か嫌な思い出があるのだろう、その表情は若干引き攣っている。どうやら以前ひどい目にあったらしい。
それでもリーダー悪魔は止めるつもりは毛頭ないようで、逆に僕を見てさらにやるきになっていた。
「バカだな、黒猫は幸運を呼び込むんだよ。ダサい大陸の噂に騙されんな」
悪魔はおもむろに僕を抱き上げると気持ち悪い声色で話しかけてきた。しかも息が酒臭い。
「おまえは今から俺の子分だ。たっぷりと福を恵んでくれや」
生憎こんなヤツに分ける幸せは持ち合わせてない。性質の悪い酔っ払いにくれてやるものなら他に用意してある。
僕は何もない空中からステッキを取り出して、男の眉間にマスクの上から思いっきり殴りつける!
「ぐあっ!」
悪魔は思わず頭を押さえ、その拍子に僕を放り出した。僕は華麗に宙返りを決めると後ろ足ですたっと道路に着地する。その予想外の動きに、取り巻きたちは何が起こったのか分からず誰も動こうとしない。
「ふふん、悪い子にはなんてあげないよ? 君達には――」
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